5月のGW明けに1回目の打ち合わせに伺い、その店内の大きさ、センスの良さ、三次元的に入り組んだ複雑な空間に感嘆しながら、最小限の間接照明に抑えられた店内。食器に特に凝ったお料理、カーブと直線をうまく生かした間仕切り、全体に木のぬくもりの感じられるもの、ダークブラウンでシックにまとめられた和風モダンのコンセプトをうまく活かせる花をイメージしていきました。店内は160席余り、フロア面積は100坪相当の見取り図をいただき、まず飾るスポットを確認していきました。それぞれのテーブルと廊下の棚の中に、同じデザインで3バリエーション40点、スポット作品11点、化粧室の個室ブースに2作品の計53作品を５人で制作しました。

お店のコンセプトは「スローフード」。ゆっくりとお食事を楽しみながら、涼をとる。これに伴い、赤やオレンジなどの暖色を使ってほしいとのリクエストがありました。店内は極力照明を落としてあり、テーマカラーがダークブラウンのため、非常に暗いイメージがあります。この中で、暖色を用いて、尚且つ涼がとれる「華やかで涼やかな花」、店名の「笹」を活かせるテースト。これらをベースに使用花材を選択していきました。暗い店内でも目立つ大きくてボリュームのある花…季節感のある「紫陽花」と、笹をイメージできるトクサを軸にイメージを広げていくことにしました。暗い中では資材の作りこみなどは余り目立たないだろうと思い、花の「気」に任せようと極力資材を用いず、伸びやかでたおやかな存在感のある花をピックアップしていきました。また、照明が明るく、壁も白い化粧室の中はナチュラルで野草感があり、楚々とした花（そばの花、ハンゲショウ、ベルテッセン等）を集め、至近距離で見たくなるようなデザインにしました。この時点から参加スタッフと打ち合わせをし、段々とムードが高まってきました。

1週間前に予定の半分程度の花の注文を終え、前日23日の活け込み当日の朝に仕入れに向かいました。スタッフもやる気十分で、皆自ら仕入れに市場まで来てくれました。頼もしい限りです。8時半に市場に集合し、既に到着した花材から市場内で水揚げ処理をしていきました。スタッフがどんどん処理をしている間に、その日の出物を新たに買い付けていき、全仕入れと水揚げを10時半に終え、現場に向かいました。11時に現場入りし、次々と花や資材を作業場となる非常階段の踊り場へと、みんなで力を合わせて運び込みます。作業場では、先ず床にビニールシートを敷き、花筒に水を入れ、スポンジの給水をおこなうなど、皆で無駄なく行動し、スムーズに進ませることができました。お店ではランチタイムが始まりますから、2時頃までは店内に入ることは出来ません。クーラーのきかない作業場で、汗をかきながら、先ずテーブル用の小さな作品からスタッフが取り掛かり、あっという間に流れ作業で40個完成させてくれました。次に、それぞれの作品を作るためのファンデーションワークに取り掛かり、ここで2チームに分かれて順番にお昼休み。やっとほっと一息です。エアコンのかかる店内で飲んだお水がとても美味しかった！